皆さんは一日にどれくらいの水分を摂取していますか?
意識的に水分補給する方もいれば、ほとんど水分を取らない方もいますよね。職業柄、水分制限がある方々にも多く出会います。
毎日、何気なく口にしている水ですが、飲み方や飲むタイミングなどにより、身体にもたらす効果も変わるので、看護師の私が詳しく解説してまいります。
人間の身体の最大80%は水分
私たちの身体にとっていちばん大切な成分は水であるといっても過言ではありません。
最も水分量が多いのは赤ちゃんで、体重の約80%が水です。年齢とともに瑞々しさが失われ、幼児は約70%、成人になると男性で約 60%、女性で約55%、さらに高齢者においては約50%と減っていきます。
私たちの身体の大部分を占める水は、いったい体内のどこにたくわえられているのでしょうか。赤ちゃんが瑞々しいのは新陳代謝が活発で、代謝には水が不可欠だからです。また、成人男女の水分差は筋肉量の差です。
実は体内で最も多くの水を抱えているのは筋肉の細胞なのです。
私たちの身体はおよそ60兆もの細胞からなっており、その細胞の一つ一つが水を内包しているのです。さらに細胞と細胞の間にも水がありますし、体内を循環する血液やリンパ液にも多くの水が含まれています。
意外に知られていませんが、硬い骨にも水が含まれているのです。まさに私たちの身体の主成分は水といえます。言い換えると、私たちが生きていくためにはそれだけ多くの水が必要だということでもあります。
水は溶媒として体内に必要不可欠
これだけ多くの水は体内でどのような働きを担っているのでしょうか。水のいちばん大きな働きは、さまざまなものを溶かす溶媒としての役割です。
体内の水分を総称して体液といいますが、そこにはたんぱく質やナトリウム、カリウムなどの各種ミネラル、そ してブドウ糖、アミノ酸、電解質など生命維持に必要なさまざまな成分が溶けています。
いろいろなものが溶け合った水の中で代謝が行われ、命の営みが続いているのです。
こうした水の溶媒力は、血液循環システムと連動して生命維持活動に生かされています。私たちが生きていくには栄養成分や酸素が必須ですが、これらは水に溶けたかたちで体内に取り込まれ、血液に加えられて、身体のすみずみに送り届けられます。
そして不要になった老廃物を水に溶けたかたちで受け取り血流に乗せます。その血液は腎臓で濾ろ過かされ、老廃物だけが便や尿として体外に排出されているというわけです。
生命維持にはもう一つ恒常性維持(ホメオスタシス)機能が欠かせません。
恒常性維持というのは、外部環 境が変わっても生体内部環境を一定に保つ働きのことで、私たちの体内では水がこの機能を果たしています。
例えば体温調節がその一つです。
真夏の猛暑でも真冬の厳寒でも、私たちは常に約36.5度という体温を維持しています。というのも、水にには熱くなりにくく、冷めにくいという性質があります。
身体の大半が水で満ちている私たちは、こうした水の性質ゆえに、外の天候や気温がある程度変動しても体温を一定レベルに維持できるのです。
水分が不足することで起こる症状は?
生命維持につながる水の過不足は、健康に悪影響を及ぼします。特に注意したいのが、脱水症や熱中症です。
水分の摂取量の減少、水分の排泄量の増加、あるいはその両方が起こると、身体の水分不足、すなわち脱水症となります。気温が高いときや湿度が高いときには、汗で水分を失いがちです。
こまめに水分を補給しないと脱水症になってしまいます。例えば炎天下にいたり、入浴・運動後に「暑い!」 と感じると喉が渇きます。これは体内の熱を放出するために吹き出た汗で失われた水分を「早く補給して!」 という体内からのSOSです。
これを無視すると、めまい、ふらつき、吐き気、頭痛などの症状が出てきます。また、体内の水分不足で血液が濃縮されるといわゆるドロドロ血液になり、血栓ができやすくなるので、脳梗塞や心筋梗塞などの引き金になるおそれもあります。
さらに脱水症が深刻になると水分不足によって体内の塩分濃度のバランスが崩れたり、体温調節ができなくなったりします。こうして体調に異変をきたすのが熱中症です。単なる水分不足と侮ってはいけません。
熱中症になると、意識障害や痙攣などの症状があらわれ、死に至るケースや重い障害が残ることも少なくありません。特に乳幼児や高齢者には注意が必要です。乳幼児は水を多く必要としており、逆に高齢者はもともと体内の水分が少ないので、いずれもわずかな水分不足が大きな影響を及ぼします。
一日に必要な水分量とは?
適切に水分補給をするには、ただたくさん飲めばいいという訳ではありません。では1日にどれくらいの水を摂取すればよいのでしょうか?厚生労働省によると体重60kgの成人男性の場合、1日あたり2.5L程度の水分が必要だと言われています。
ただし、飲み水として1日2.5L飲まなければならない、というわけではありません。食事で約1.0Lの水分を摂取でき、また体内の物質を代謝したときに約0.3Lの水が生成されます。そのため、1日1.2Lを目安にこまめな水分補給をすれば、体に必要な水分量を確保できます。
もちろん、体重や運動習慣の有無、気温といった要因で必要な水分量が変わることもあります。たくさん運動して汗をかいた日は多めに水を飲むなど、状況にあわせて摂取する水分量を調節することが大切です。
水はいつ飲むとより効果的?
水分補給におすすめのタイミングは、以下の5つです。
- 就寝前
- 起床時
- スポーツの前後や途中
- 入浴の前後
- 飲酒中や飲酒後
これらのタイミングは特に体内の水分が不足しやすいと考えられているため、意識して水を飲むことが大切です。
就寝前や起床時は、枕元に水を用意しておくと忘れずに飲むことができます。また、これらのタイミングだけでなく、のどが渇く前にこまめな水分補給を心がけましょう。
水分摂取に適しているのはどんな飲み物?
水分摂取する際は、清涼飲料水や味噌汁のように砂糖や塩分の濃度が高いものを飲むと水分の吸収が遅くなるとも言われています。
ミネラルウォーターや麦茶のように、なるべく砂糖や塩分が含まれていないものを摂取することが大切です。
加えて、アルコールやカフェインを多くを含む飲料は、尿の量を増やすためかえって脱水につながると考えられています。
お酒やコーヒーなどは水分補給に適さないので、注意しましょう。
水と経口補水液との違い
脱水症・熱中症の予防には、1 日の生活の中でこまめに水分を補給することが大切です。しかし、脱水症になってしまったら、水だけではなくナトリウ ムやカリウムなどのミネラルや電解質も同時に失われています。
そのため水分補給と体調回復には、水よりも経口補水液のほうが効果的です。経口補水液は電解質が溶けている体液の成分に近いので、すみやかに吸収されます。
スポーツドリンクにもナトリウムなどの電解質は含まれていますが、経口補水液には塩分がより多く含まれている一方で糖分が少ないという長所があります。
上記の観点から、水は予防目的。手当てには経口補水液/スポーツドリンクという分類がわかりやすいと思います。
水を正しいタイミングで飲むメリット
適切な水分補給として「こまめに1日1.2Lを目安に飲む」ことが大事ということを紹介いたしました。
では正しく水分補給をすることでどのようなメリットが得られるのでしょう?
水を飲むことで期待できるメリットは主に3つあります。
- 肌質の変化
- 血液の循環を手助けする
- 排便を促す
それぞれの水を飲むメリットについて詳しく解説いたします。
1肌質の変化
適切に水分補給すると、肌質の変化が期待できます。
肌の中まで水分を補うには、適度な水を飲むことが大切と言われています。化粧品で肌の表面から水分を補給しても、肌の内部まで水分を届けるのは難しいからです。
また老廃物や毒素の排出を促すとも言われています。古い細胞を新しい細胞へと変える新陳代謝の改善も期待されているので、より健康的な肌を維持できるでしょう。
2血液の循環を手助けする
血液は赤血球や白血球といった血球と血小板、それらを浮遊させている血漿(けっしょう)から成っており、このうち血漿は、約9割が水分と言われています。
体内の水分量が十分であれば血液はサラサラと流れやすくなりますが、水分が不足すると血球部分が多くなり、粘度の高いドロドロとした血液になってしまいます。
詳しくは後述しますが血液の循環不全は酸素や栄養素の運搬に支障をきたし、場合によっては脳梗塞や心筋梗塞につながる可能性もあります。
水分を適切に補えば、血液の流れをサポートでき、こうした事態を防ぎやすくなるでしょう。
3排便を促す
体内の水分が少なくなると便に含まれる水分も減るため、便秘になりやすいとされています。適切に水分補給すれば便がやわらかくなり排便を促してくれます。
もちろん便秘は水分不足だけが原因で起こるものではありません。
規則正しい食生活や運動、睡眠などを意識しつつ、併せて適度な水分補給もおこないましょう。
まとめ
私達の身体はほとんど水分が構成されており、いかに水分摂取が大切かということがお分かりいただけたかと思います。
看護師の私としても、日頃から水をこまめに摂取することをおすすめします。
私は経済面と手軽さから浄水型ウォーターサーバーを利用しております。
子育て期間は、子供を抱っこしながら片手でお水を用意して、こまめに水分摂取をし、授乳中は想像以上に体内は脱水になっているため、こまめに水分補給をすることを意識しておりました。
コップ1杯というのは、容器の八分目、150mℓ程度ですが、飲んでおいしいと感じられる量が、そのときに身体が求めている適量です。また安全でおいしい水は味の基本として大切です。
皆さまの生活に水を取り入れていただく、きっかけになれば幸いでございます。