東京の水道水がおいしい理由|水資源管理のプロが解説!

東京の水道水がおいしい理由|水資源管理のプロが解説!
建設コンサルタント|田中 智司建設コンサルタント
田中 智司
1998年、国立大学工学部卒業後、大手建設コンサルタント設計部門にて、河川計画、ダム計画を中心に多くの治水計画の検討、立案を担当。最近では水資源管理、水循環に関する調査にも多く携わり、幅広く水問題に取り組んでいる。

「東京の水道水が美味しい!」という言葉を最近よく聞きます。

水道水にとって最も大切なのは、安全性であることは言うまでもありませんし、水道整備の目的も、一義的には住民の健康です。その一方で、生活が豊かになるにつれ、より美味しい水道水への関心が高まってきました。

かつて東京の水道水といえば不味くて飲めたものではありませんでしたが、こうした美味しい水道水への欲求を背景に、今では胸を張って全国に売り出すまでに美味しくなったのです。

東京都が行った調査(後述)では、なんと6割近くの人が東京の水道水はミネラルウォーターと同等かそれ以上と答えています。
その陰にどんな挑戦があったのか、どのような技術が使われているのか、見ていきたいと思います。

安全な水道水から美味しい水道水へ

私たちの健康を守るために整備されてきた水道でしたが、高度成長期の水道水は決して美味しいものではありませんでした。しかし、東京の水をはじめ、かつて不味いと言われた大都市の水道水が、今ではミネラルウォーターに匹敵する美味しさに生まれ変わりました。

その陰には、美味しい水を飲んでほしいという、国や各地の水道事業者の努力があったのです。

近代的な水道水の始まり

私たちが普段なにげなく使っている水道ですが、現在のような近代的な水道が全国津々浦々に普及するようになった理由をご存じでしょうか。

その大きなきっかけの一つが、明治維新の開国によってコレラなどの疫病が海外から流入して大流行したことです。こうした疫病から国民を守るために、きれいな飲料水の普及や、汚水を排除するしくみが必要となり、上水道、下水道が整備されることとなりました。

わが国の最初の近代水道は、明治20年に横浜で給水が開始されたもので、相模川を水源としていたといいますから、当時としてはかなり大変な工事だったと思われます。

安全な水道水と水質基準

このように、水道水は私たちの健康で快適な生活を守るため、本当に厳しく管理されているのです。

このため水道水には、守らなければならない「水質基準」として大きく以下の二つが定められています。

水質基準
  1. 「健康に関する項目」:水銀、トリハロメタン、大腸菌などの31項目
  2. 「生活上の支障に関する項目」:味や匂いといった20項目
  3. サンプル

このように、水道水は。私たちの健康で快適な生活を守るため、本当に厳しく管理されているのです。

東京の水道水が不味かった理由

こんなに厳しいチェックをクリアして私たちのもとに届く水道水ですが、特に東京のような大都市では「とても不味くて飲めない!」という時期が長くありました。

それは何故なのでしょうか。

大きな要因は首都圏の広い範囲での人口増加と都市化の進展です。東京都の水道水は多摩川の他に、荒川や利根川(江戸川)から水を取ってこれを浄化していますが、関東平野全体の都市化の進展にともなって、これらの河川に汚水排水やゴミが流れ込み水質が急速に悪化してしまったのです。

浄化によって安全な水ではあるものの、匂いや味にはもとの水質の影響が出てしまいますし、消毒のための塩素によってカルキ臭さも残ってしまいます。

こうして「東京の水道水は不味い!」ということになってしまったのです。

美味しい水道水への国の動き

「美味しい水道水を飲みたい!」という要望に応えようとする、国の動きは意外と早いものでした。

なんと今から38年も前の1984年(昭和59年)に、水道行政を所管していた当時の厚生省は、「おいしい水研究会」を設立していたのです。

この研究会では、美味しい水の水質要件を検討し安全で美味しい水道水を供給することを目的としており、以下のような取り組みを行いました。

・全国10万人以上の都市で調査を行い、32都市を「水道水のおいしい都市」として選定

・味に影響する7つの項目について具体的な数値を定め、「おいしい水の要件」として発表(1985年(昭和60年))

こうした取り組みの意義は、美味しい水への関心を高めることで、実際に水道水を供給する市町村に対して、美味しい水道水への挑戦を促したことにあると言えるかもしれません。

美味しい水道水への東京都の動き

東京都水道局が、東京の水道水の汚名挽回に乗り出したのは、おいしい水研究会から4年後の1989年(平成元年)のことです。

手始めに江戸川の水を浄化している金町浄水場から、高度浄水施設の整備に着手して以来、他の浄水場でも順次整備を進め、実に四半世紀を経た2013年(平成25年)秋、100%の高度浄水処理を実現したのです。

また、東京都では、独自に「おいしさに関する水質目標」を定めて、国の研究会が提案したものより、さらに美味しい目標を設定しているのです。

例えば、ほとんどの人がカルキ臭を感じない、かび臭や不快な味を感じないといったようにです。

美味しくなった東京の水道水

2018年(平成30年)に東京都が主催する「東京水飲み比べキャンペーン」での調査で、ミネラルウォーターと水道水を飲み比べてどちらが美味しいかを尋ねたところ、以下のような結果となりました。

・ミネラルウォーターの方がおいしいと感じた(44.8%)

・水道水の方がおいしいと感じた(40.4%)

・どちらもおいしい(14.8%)

つまり、55.2%の人が、水道水はミネラルウォーターと同じかそれ以上に美味しい、と感じているのです。東京の水道水は美味しい!と胸を張っていいでしょう。

東京の水道水が美味しい理由

水道水を不味いと感じるのは、具体的にどのようなことが原因なのでしょうか。そして、その水がどうして美味しくなったのでしょうか。

水道水の不快な味の要因と、これを取り除くための技術について、少し詳しく見ていきたいと思います。

水道水が不味いと感じる原因

水道水を不味いと感じてしまうのは、何故なのでしょうか?

まずは、一般的に「カルキ臭」といわれる、残留塩素による臭いです。

水道水には衛生の観点から、消毒剤として微量の塩素を添加することが義務付けられていて、蛇口から出る水に残留塩素が0.1㎎/リットル以上含まれることが必要とされています。水道の水にもともと含まれているアンモニア性窒素とこの塩素とが化学反応を起こしてカルキ臭のもとになる物質が発生するのです。

この他、水道水に有機物や微量の金属類といった物質が含まれることで、雑味が増し不味いと感じる要因となります。

かび臭による苦情

水道水の味や臭いについての苦情として最も多いのが、「かび臭」によるものです。

これは、水道の水源地である湖や貯水池に、アナベナやフォルミウムといったある種の植物プランクトンが大量に繁殖することで、2-メチルイソボルネオールやジオスミンといった、かび臭のもとになる物質が発生することが原因です。

東京都が高度な浄水処理に着手した1990年代、我が国では約2200万人が臭いの問題のある水道水を飲んでいたと言われています。

高度な浄水処理による対策

このような、水道水を不味いと感じる原因を取り除くために、東京都をはじめ多くの水道事業者が取り組んできました。

東京都水道局では、さきに触れたように、早くから高度浄水施設を導入して、美味しい水道水づくりに挑戦してきました。

通常の浄水場では、河川から取水してきた水に凝集沈殿剤という薬剤を混ぜて、水中の微粒子をくっつけて大きな粒子にし、沈殿させたり濾過するなどの方法で取り除きます。最後に消毒剤として塩素を加えることで飲料水として、店舗や家庭に届けます。

高度浄化施設では、通常の方法では取り除けない微量の物質や有機物を取り除くことによって、いやな臭いや雑味のない美味しい水を届けることができるようになるのです。

高度浄水処理の仕組み

高度浄水処理について、もう少し詳しく見てみましょう。

高度浄水処理の方法には、大きく①活性炭処理、②オゾン処理、③生物処理の3つの方法があり、これらの方法を組み合わせるのが一般的で、東京都でもこの3つの方法を利用しています。

活性炭には、物質を吸着する性質があり、これによって臭気や雑味のもととなる微量の物質を取り除きます。

微生物には、有機物などを分解する働きがあり、これを利用して有機物を取り除きやすいように分解します。

オゾンには強力な酸化作用があり、かび臭の原因となる物質やトリハロメタンの元になる物質、有機物などを分解することができます。

カルキ臭を抑えるきめ細かな対策

さらに、東京都ではカルキ臭のもととなる残留塩素をできるだけ少なくする対策も行っています。

浄水場で添加する残留塩素は少なめにしておくのがよいのですが、浄水場から遠ざかるにつれて残留塩素は減少するため、各家庭の蛇口に到達した時点で法令に定められた量を満たせない恐れがあります。このため、残留塩素を途中の給水所で補うという、きめ細かなやり方によって、少しでも美味しい水を届けようとしているのです。

水源地において原因を取り除く対策

浄化技術が高度になっても、水源となる河川や貯水池の水が美味しい水であること、これに勝るものはありません。特に、湖やダムなどの貯水池では、上流から有機物や窒素・リンを多く含んだ水が流れ込むことで、プランクトンが大量に発生し、かび臭などの原因となりがちです。

貯水池などで、プランクトンの発生を抑える取り組みも、以前から行われてきました。これが「曝気」という方法で、簡単にいえば貯水池の中に空気を送り込んで、水面近くの水とやや深いところの水を循環させるものです。

かび臭の原因となる植物プランクトンは、光が届く水の表面に集まりやすいので、これを光が届かない深いところに送り込むことで繁殖を抑制するのです。

高品質な飲み水をひとりひとりに

美味しい水を飲みたい、そして我がまちの美味しい水を誇りにしたい。

こうした動きが広がる一方、ミネラルウォーターや浄水器の普及など、ひとりひとりが美味しく水を飲む方法や、飲料水のブランドや品質を選択するようになってきました。

美味しい水とのつきあいかたに少し目を向けてみたいと思います。

東京だけではない「美味しい水道水」

高度浄水処理を導入したのは、東京だけではありません。

大阪や横浜、千葉といった都市部においては、美味しい水道水の供給に向けて、高度浄化施設が整備され、水道統計によれば2009年度(平成21年度)時点で、全国の年間浄水量の27.41%が高度浄水処理されています。

その一方では、飲み水としてミネラルウォーターを選ぶ人も増え続け、日本の一人当たり消費量は2009年(平成21年)では19.6リットル、2021年(令和3年)では実に35.4リットルと、この10年で急増していることが分かります。

こうした流れを受けてか、全国各地の自治体で自慢の水道水を「○○市の水」等と銘打ってペットボトルに詰めて売り出しています。

甲府市のように清冽な渓流の水を使った水道水もあれば、泉佐野市のように高度浄化処理したできたての水道水をボトリングしたものなど様々ですが、自らの水道水を美味しい水として誇り、積極的に売っていく、そうした時代となったのです。

品質の良い飲料水へ多様化の動き

水道水が美味しくなって当たり前に飲めるようになるのと平行して、飲み水の形も多種多様化してきました。いくつか挙げてみましょう。

・ミネラルウォーター:海外から国内の湧き水、あるいは水道水まで、ペットボトルを購入して引用とするもの。硬水や軟水、ミネラルが多いものからプレーンなものまで、様々な味を楽しめます。

・浄水器:蛇口に浄水器を取り付け、水道水をもう一度フィルターで浄化するのも方法の一つ。手元で水道水を浄化するので、安心感があります。

・ウォーターサーバー:飲料水を大きなボトルなどで購入し、専用のサーバーを使って、いつでも美味しい水を手軽に楽しむことができます。

品質の良い水を安心して飲むために、水道水以外の多様な選択肢が登場している現在、自分のライフスタイルに合った美味しい水の飲み方を探すのも、水とつきあう楽しみの一つと言えるでしょう。

高品質な飲み水をひとりひとりに

日本という国土に暮らす私たちにとって、美味しい水を飲むということは、決して贅沢なことではなくて、心身ともに健康な生活を送っていく上で、大切な権利と言ってよいのではないでしょうか。

ハイスペックの浄水器やウォーターサーバー、海外の高価なミネラルウォーターなど、各人の経済力に応じたいろいろな水の楽しみ方があっていいでしょう。日本の自然の水も、山の奥深くに湧き出る清冽な泉など、その場所に行ける者しか味わえない贅沢な水もあるでしょう。

しかし、この国に暮らすひとりひとりに、品質の良い美味しい水道の水を飲んでもらう、水道事業に携わる全ての人々の、その思いを私たちは大切にしなければならないと思うのです。

まとめ

東京の水道水は、間違いなく「おいしい!」と言っていいこと、そして高度浄化処理の技術を導入することや、水源地での藻類の繁殖を抑える対策などによって、水道水の味が格段に良くなったことを見てきました。

ミネラルウォーターの普及など高品質の飲料水の選択肢が広がった一方で、やはり公平で廉価なインフラサービスである水道水は、無くてはならないものです。

水道事業は、施設の老朽化や担い手不足といった、様々な課題に直面していると言われます。
それでも、美味しい水道水、高品質な飲料水を提供していくために、水道事業者の挑戦はまだまだ続いていくのです。

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