水は私たちの生活には決して欠かせないものです。三日間食事を摂らなくても人は生き抜くことができますが水は半日飲まないだけで脱水症状を起こし1日が立つ頃には死んでしまうほどです。
水に健康を脅かされる人が世界には存在します。そういった方々を紹介していきます。
脱水症状とは?
脱水症状とは体の中の水分と塩分、その他のミネラルなどが足りなくなり様々な健康被害を引き起こす状態のことを言います。
一般的に夏場の温度の上昇により水分と塩分の供給が追い付かず意識の混濁、体温上昇、だるさや吐き気、口の渇き、けいれんを引き起こします。乳幼児・高齢者では、必要な水分量や水分不足を感じにくいなどの違いがあるため、注意が必要です。また冬場でも暖房の利きすぎなどで水分不足に陥ることがあります。
部屋の温度は、成人にはちょうどいい温度でも小児にとっては暑すぎたため脱水症状を引き起こした例も見られます。人は歳を重ねることでどんどん体内の水分が失われていくので年齢にあった水分摂取が必要となります。
脱水症状5つの対策
対策は大きく5つあります。
- 温度計・湿度計を活用する
- 日差しを避け、クーラーなどで温度管理を徹底する
- 1日に決まった量の水を飲む
- 汗をかいたらスポーツドリンクを飲む
- 下痢に用心する
それぞれ詳しくご紹介いたします。
1温度計・湿度計を活用する
温度と湿度が測れるツールを夏場は常に持ち歩いていた方が良いでしょう。
もちろん屋内にも必要ですので2個あった方がより安全に過ごせるでしょう。
2日差しを避け、クーラーなどで温度管理を徹底する
帽子を被ったり日傘をさすことで体内の温度上昇を防ぐことができるでしょう。また屋内に居るときでもクーラーを使用して温度管理をすることが重要です。
電気代を節約しようと思い、クーラーをつけない高齢者が多くみられますが、脱水症状になると救急車を呼ぶことになるため救急治療代が後に請求されます。およそ保険適用で8万円~9万円程度のお金が必要となります。夏の間、24時間クーラーをつけっぱなしにしても4万円程度で済むため、屋内で暑いのを我慢するよりもよほど節約ができます。
31日に決まった量の水を飲む
人間は年齢にもよりますが、1日2L~2.5Lの水を必要とします。
15分~20分おきに180~200mlの水分を摂取すると良いとされています。勿論汗を大量にかいた際にはもっと多くの水分を必要とするためこの限りではありません。
4汗をかいたらスポーツドリンクを飲む
汗をかいたら水よりもスポーツドリンクを飲むのが好ましいとされています。
塩分・ミネラルなどを同時に摂取できるため脱水症状を防ぐことができます。ポカリスウェットやアクエリアスなどがその代表です。またはOS1などもよいでしょう。
5下痢に用心する
下痢になると腸で吸収されるべき水分が便として排泄されてしまうので失われた分だけ水分補給が必要です。またノロウィルスや急性大腸炎になった場合などには発熱したり下痢嘔吐の症状が出現したりするため、一気に、かつ大量に水分が失われていくため慎重になる場合があります。
下痢や熱が収まらない時は早めに病院を受診し、点滴などの処置を行ってもらうと良いでしょう。
水中毒とは?
水中毒とは、過剰の水分摂取によって生じる中毒症状であり、具体的には低ナトリウム血症や頭痛、嘔吐、失禁、意識混濁、痙攣を生じ、重症になると死亡に至ります。
人間の腎臓が持つ最大の利尿速度は、毎分16mLであるため、これを超える速度で水分を摂取すると、体内の水分過剰で細胞が膨化し、希釈性低ナトリウム血症を引き起こす水中毒に陥ってしまうのです。
体内のホメオスタシス(恒常性)を崩す事によるものです。
どんな人が水中毒になりやすい?
水中毒になりやすい疾患や病気もあります。
知的障害者
知的障害を持つ方はうまく他者とコミュニケーションをとることが出来ずそれがストレスとなって多飲を引き起こしてしまいます。これは全ての知的障害を持つ人に現れるものではなく一部の知的障害者に起こるものです。
精神疾患の病態
不安、焦燥、幻覚、妄想等から飲水が習慣化して多飲傾向となります
向精神病薬の副作用
抗神病薬の副作用の口渇により飲水が習慣化し、強迫的に飲水が増えることがあります。また、抗精神薬の長期使用により、慢性的にドパミンD2受容体が遮断され、視床下部の口渇中枢を刺激する中枢性飲水惹起物質のアンジオテンシンⅡへの感受性が亢進し、さらに抗利尿ホルモンの分泌が促進され、水分貯留を引き起こすことが原因です。
抗精神病薬は副交感神経系の働きを阻害するため、唾液が出にくくなって、口やのどが渇いてしまう場合があります。
渇きを和らげようと大量の水を飲みたくなるという異常な行動が引き起こされます。
水中毒の対策
知的障害のある人にはまず信頼関係を築くことから始めなければなりません。
知的障害を持つ人は自分の意思が他者に伝わらないことによるストレスから飲水行動をとってしまうため本人との意思疎通をしっかりと取れる工夫をするのが重要です。また飲水について本人に理解を求めることも重要です。
伝え方は多様ですが絵を使ったり、道具を用いたりして本人が理解できるようなやり方を模索することが重要です。
精神疾患によって水を求める人に対しては命の危険が関わってくる場合があるため精神疾患を主に診ている病院に入院することが望ましいです。
医師の指導に基づいて保護室に入ってもらうことで多飲を防ぐことができます。保護室は外からでしか鍵の開け閉めが出来ず、またドアノブもありません。トイレも水洗ではないためトイレの水を飲んでしまう危険性もありません。ここで過ごしている間に本人に合う薬を処方し症状が落ち着いたと医師が判断出来たら一般病棟に移ります。
抗精神病薬による多飲では主治医に相談して薬を調整してもらいましょう。また、適度な水分をとる、キャンディをなめる、ガムをかむ、うがいをする、氷をなめる、などの工夫でも症状を軽減できます。
ある病院では飲水申請というシステムを導入しています。これは看護師に飲水許可を貰い看護師がコップ一杯の水を渡す、といった仕組みになっています。看護師と患者本人との関係性を築く上で非常に効果的で、看護師が無理矢理飲水行動を制限したり、本人が怒ったりということを防ぐことができるので、患者本人が看護師に信頼をする過程でとても重要になってきます。また看護師も自分の目の前でどのくらい飲水をしたのか確認を出来るため看護師の精神的・肉体的な負担を防ぐことになります。
保護室に入れて患者の自由を奪うよりもこういったシステムを導入することもよいでしょう。
1日の終わりに体重を計測することでどれだけ飲水をしたか把握することも出来ます。
体重の増加が著しい場合は必要以上の飲水行動をしたことが分かるため、患者本人に気づきを与え、飲水行動を減らしていくきっかけを作ることができます。
【引用元】
・地方独立行政法人山梨県立病院機構 山梨県立北病院ホームページ
・医学書院 生理学 監修 奈良勲 鎌倉矩子