私たちの体には細菌・ウィルス・寄生虫などの感染性微生物や異物などから、身を守るための「免疫」という仕組みがそなわっています。
この免疫の働きが、現代文明による環境やライフサイクルの変化によって異常を起こし、くしゃみ、発疹、呼吸困難などの症状を起こしてしまう状態が「アレルギー」です。
では水アレルギーはどうなのでしょうか?実は水アレルギーは水蕁麻疹の俗称なのです。
水アレルギーは水蕁麻疹
実際はアレルギー性ではなく物理的刺激による蕁麻疹なのです。
きわめて稀な症状なので、世界でも水アレルギーの症例は100件未満です。
名前の通り、水に反応するもので自分の体の涙や汗、唾液などにも反応し、皮膚に水がかかるとおよそ15分後に当該部位が赤く腫れ、痒みや激痛を伴います。この症状は2時間ほどで治まりますが、患者が受ける痛みは相当なものであるといいます。体中を剣山で引っかかれるような痛みが2時間絶え間なく患者を苦しめます。
体力的にも精神的にも重大な苦痛であることは容易に想像できます。なお、アレルギー疾患ではなく皮膚疾患であるため、水を飲んだりすることや体内の水分には害はありません。
現在の医療では特に対処法はなく生活面では患者はなるべく痛みを引き起こさないようにする工夫や行動制限を強いられているのが現状です。そして水アレルギーは水の温度の違いに関係なく症状が起きます。そのため冷水に反応する寒冷じんましんや、温水に反応する温暖じんましんと混同されやすいという特徴があります。このため診断に時間がかかることもありその間、患者には不安がつきまといます。
症例が極めて少ないため医師も判断に迷うことが多くあるといいます。
水アレルギーは日常生活でも制限が大きい
水アレルギーを発症した患者の生活は、大きく制限されてしまいます。
皮膚科医は患者に以下のような生活を勧めます。
- 入浴なしで週3回、短い時間の冷水シャワー
- 汗をかかないように体温を上げすぎない
- 雨に濡れることも大変危険な為、外出も注意
汗をかくスポーツはできないので、体育の授業は見学することしか出来ません。また友達や恋人の寝汗がついてしまうために一緒に寝ることもできません。
友人や恋人と過ごすことにも様々な制約がついてまわるため人間関係でうまくいかない例も少なくありません。また温度管理の徹底された部屋で過ごすことを強いられるため抑うつ傾向になる人もいるでしょう。
家での生活でも気を付けなければいけないことがあります。
洗い物やお風呂掃除などをする際はゴム手袋をつけ、マスクや眼鏡をかけ、長靴を履いて行わなければいけません。少量でも水が体に付けば症状が現れるからです。しかしこういった装備をすることで汗をかく危険性も高いので水仕事をすることは大変なリスクを負うこととなります。
他には水アレルギーの知識や理解のない他者から水をかけられたりと常に水に怯えながら生活しなければならないのです。
水アレルギーというのは世界的にみても症例の数が極めて少なく社会の理解を求めることが非常に困難な病気なのです。
水アレルギー患者の生活について
水アレルギーを発症した患者の生活をご紹介いたします。
温度管理の徹底された部屋で過ごす
汗をかかないことが重要になってくるため夏場などは細心の注意を払って過ごします。勿論外出などもってのほかです。また冬場も部屋を暖め過ぎて汗をかいてしまわないようにしなければいけません。
布団や着るものにも汗をかきにくいものをじっくりと選ぶ必要があります。
涙を流さないよう意識する
本来であれば涙にはストレス物質を排出する機能がありますが、涙も水アレルギーを持つ方にとっては危険なのです。
悲しい涙、感動の涙、嬉し涙、すべてが危険なのです。
感情を一定に保つ訓練や悲しい物語は読まないといった対策を講じている方が多いようです。
なるべく入浴しない
多くて週に3回、ごく短時間にシャワーで冷水を浴びるだけの方が大半です。
バスタオルで体を拭く際は、体を目の粗い紙やすりでこすられているような苦痛を伴います。
クリームで皮膚を保護する
水をはじくクリームを塗ることによって水の掛かりやすい部分を守ることができるため適度にクリームを塗ることが生活をおくりやすくする場合があります。
水アレルギーまとめ
水アレルギーを発症した方たちにとって必要なことは、多くの方に水アレルギーのことを知ってもらうことです。
年齢に応じて学校に通ったり、会社に勤めたり、ライフステージの変化に伴う対策も必要ですが、教師や会社の上司に理解がなければ体力的にも精神的にも、とてつもない危険が及ぶことになります。
水アレルギーは、まだまだ社会に認知されていない症状です。より多くの方に知ってもらうことで、水アレルギーの症状をお持ちの方に対して、危険な対応を避けられます。
社会が認知及び理解していくことで、水で苦しんでいる方の助けになるでしょう。